心臓のはたらき
心臓は、胸郭の中央部、肺の下に位置する、体内の血液を循環させるためのポンプの役割を担う臓器です。
その大きさは握りこぶしよりやや大きい程度の500gにも満たない臓器です。
心臓は、1分間に約70回、1回あたり約70mlの血液を送り出すといわれています。
心臓の働きが正常に行われることで、体内のすべての細胞に酸素や栄養素が行き渡り、老廃物が排出され、生命活動が維持されます。
◆心臓の4つの部屋
心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれています。
<右心房の働き>
右心房の働きは、全身から戻ってきた血液を受け入れることです。
全身から戻ってきた血液は、酸素を失い、二酸化炭素を多く含んだ血液です。
この血液は、上大静脈、下大静脈から右心房に流れ込みます。
<右心室の働き>
右心室の働きは、肺に血液を送り出すことです。
右心室の筋肉が収縮すると、血液が肺動脈に送り出されます。
肺動脈を通って、血液は肺に送られ、酸素を取り込みます。
<左心房の働き>
左心房の働きは、肺から戻ってきた血液を受け入れることです。
肺できれいになった血液は、肺静脈から左心房に流れ込みます。
<左心室の働き>
左心室の働きは、全身に血液を送り出すことです。
左心室の筋肉が収縮すると、血液が大動脈に送り出されます。
大動脈を通って、血液は全身に送られ、酸素や栄養素を体内の細胞に届けます。
<血液の流れ>
右心房➡右心室➡肺➡左心房➡左心室➡全身
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◆弁(べん)
心臓の部屋と部屋の間には、
「弁」と呼ばれる構造があり血液が一方通行に流れるようにする役割を担っています。
- 右心房と右心室の間にある三尖弁は、右心房から右心室に血液が流れ込むときに開き、右心室から右心房に血液が逆流するのを防ぎます。
- 右心室と肺動脈の間にある肺動脈弁は、右心室から肺動脈に血液が流れ出すときに開き、肺動脈から右心室に血液が逆流するのを防ぎます。
- 左心房と左心室の間にある僧帽弁は、左心房から左心室に血液が流れ込むときに開き、左心室から左心房に血液が逆流するのを防ぎます。
- 左心室と大動脈の間にある大動脈弁は、左心室から大動脈に血液が流れ出すときに開き、大動脈から左心室に血液が逆流するのを防ぎます。
◆心 筋
心臓の筋肉は、心筋と呼ばれる特殊な筋肉でできています。
心筋は、電気信号によって収縮し、血液を送り出す力を生み出します。
心筋は、心臓の壁全体に広がっています。心筋の収縮によって、心臓の部屋が小さくなり、血液が押し出されます。
◆心臓の血管
大きく分けて以下の3つに分けられます。
肺動脈
全身から戻ってきた血液を心臓の左心房に送り込む血管です。肺静脈は、4本あり、それぞれ上肺静脈2本と下肺静脈2本に分けられます。
上肺静脈は、肺の上半分から集まった血液を心臓の左心房に送り込み、下肺静脈は、肺の 下半分から集まった血液を心臓の左心房に送り込みます。
大動脈
心臓から出てすぐの太い血管で、全身に血液を送り出す役割を担っています。大動脈は、心臓の左心室から出て、上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈の3つに分かれ、全身に枝分かれしていきます。
冠状動脈
心臓の筋肉に酸素や栄養を送り込む血管です。心臓の筋肉は、常に動いているため、酸素や栄養を大量に必要としています。冠状動脈が詰まると、心筋梗塞を引き起こす可能性があります。冠状動脈は、大きく分けて以下の2つに分けられます。
左冠動脈:心臓の左側に栄養を送り込む
右冠動脈:心臓の右側に栄養を送り込む
左冠動脈は、さらに左前下行枝と左回旋枝に分かれます。左前下行枝は、心臓の前側に栄養を送り込み、左回旋枝は、心臓の後側に栄養を送り込みます。
◆心臓の状態を調べる検査
心臓の検査は、それぞれの検査の特性によって、得られる情報や適応症が異なります。心臓の病気が疑われる場合は、適切な検査を受けることが大切です。
聴診
心臓の音を聴いて、心臓の働きを調べる検査です。心臓の音は、心臓の拍動によって生じる音です。聴診器を使って、心臓の音を聴いて、心臓の弁の開閉音や雑音などを調べます。
血圧測定
血圧を測る検査です。血圧は、心臓が血液を送り出す力によって生じる圧力です。血圧計を使って、心臓から送り出される血液の圧力を測ります。
エックス線検査
心臓の形や大きさを調べる検査です。X線を使って、心臓の影を撮影します。心臓の大きさや形が異常な場合は、心臓の病気の可能性があります。
心電図検査
心臓の電気信号を記録して、心臓の働きを調べる検査です。心臓には、電気信号によって心筋が収縮する仕組みがあります。心電図検査では、心臓の電気信号を記録して、心臓の働きの異常を調べます。
心エコー検査
超音波を使って、心臓の形や大きさ、動きを調べる検査です。超音波を心臓に当てて、心臓の内部を画像として映し出します。
CT検査
コンピューター断層撮影で、心臓の内部を詳しく調べる検査です。X線を使って、心臓の断層画像を撮影します。心臓の内部に血栓や腫瘍などの異常がある場合は、CT検査で発見することができます。
MRI検査
磁気共鳴画像検査で、心臓の内部を詳しく調べる検査です。強力な磁場と電波を使って、心臓の断層画像を撮影します。CT検査と同様に、心臓の内部に血栓や腫瘍などの異常がある場合は、MRI検査で発見することができます。
心臓カテーテル検査
カテーテルを心臓に挿入し、血管や弁の状態を調べる検査です。カテーテルは、細い管状の器具です。カテーテルを血管から挿入して、心臓まで進めます。心臓の血管や弁の状態を調べるために、カテーテルの先端に付いている装置を使用します。
心臓の疾患を調べる血液検査
- 心筋トロポニンT(cTnT)検査:心筋の損傷によって血液中に放出されるタンパク質です。心筋梗塞の診断に用いられます。
- クレアチニンキナーゼ(CK)検査:筋肉の損傷によって血液中に放出される酵素です。心筋梗塞の診断に用いられます。
- BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)検査:心臓の機能が低下すると血液中に放出されるホルモンです。心不全の診断に用いられます。
- NT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)検査:BNPと同様に、心臓の機能が低下すると血液中に放出されるホルモンです。心不全の診断に用いられます。
- トロポニンIやトロポニンTの血中濃度を経時的に測定する検査:心筋梗塞の診断や治療に用いられます。
◆心臓の代表的な薬
高血圧治療薬:血圧を下げる薬
- 利尿薬:腎臓から水分を排出して血圧を下げる薬です。
- 降圧剤:血管を拡張させて血圧を下げる薬です。
- ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬):アンジオテンシンⅡの働きを抑えて血圧を下げる薬です。
- ACE阻害薬:アンジオテンシン変換酵素の働きを抑えて血圧を下げる薬です。
狭心症治療薬:心臓に血液を送り出す力を高める薬
- 硝酸薬:血管を拡張させて血流を改善する薬です。
- カルシウム拮抗薬:心臓の収縮力を抑えて血圧を下げる薬です。
心筋梗塞治療薬:心筋梗塞の症状を緩和し再発を予防する薬
- 血栓溶解薬:血栓を溶かして血流を改善する薬です。
- 抗凝固薬:血液を固まりにくくする薬です。
- 抗血小板薬:血小板の働きを抑えて血栓の形成を予防する薬です。
心不全治療薬:心臓の機能を改善し心不全の症状を緩和する薬
- 利尿薬:腎臓から水分を排出して血液量を減らす薬です。
- 血管拡張薬:血管を拡張させて血流を改善する薬です。
- 抗不整脈薬:不整脈を抑える薬です。
これらの薬は、心臓の疾患の種類や症状によって、適切な薬が選択されます。
◆手術療法とカテーテル治療
心臓の疾患の治療には、薬物療法だけでなく、手術療法やカテーテル治療などの方法も用いられます。
「手術療法」
心臓を直接操作する治療方法です。心臓の病変を切除したり、バイパスを作成したりすることで、心臓の機能の改善や再発の予防を図ります。
手術療法の種類
- 冠動脈バイパス手術:冠状動脈が狭くなったり、詰まったりして血流が悪くなった場合に、別の血管をバイパスして、血流を改善する手術です。
- 心臓弁膜手術:心臓の弁が狭くなったり、閉じなくなったりした場合に、弁を修復したり、交換したりする手術です。
- 心臓移植:心臓の機能が完全に失われた場合に、他の人の心臓を移植する手術です。
「カテーテル治療」
カテーテルと呼ばれる細い管を血管から挿入して、心臓の病変を治療する方法です。手術療法に比べて、侵襲が少なく、回復が早いというメリットがあります。
カテーテル治療の種類
- 冠動脈ステント留置術:冠状動脈が狭くなった場合に、ステントと呼ばれる金属製の管を挿入して、血管を拡張する治療です。
- バルーン拡張術:冠状動脈が狭くなった場合に、バルーンと呼ばれる膨らませる管を挿入して、血管を拡張する治療です。
- 経皮的冠動脈形成術(PCI):冠状動脈の狭窄部にステントやバルーンを用いて治療する方法です。