医師事務作業補助者とは
◆医師事務作業補助者が求められる背景
近年、医師不足および勤務医の時間外労働の超過が深刻化しています。この課題に対処するため、「医師等の働き方改革」が推進されており、令和6年4月1日より上限規制(960時間/年)が適用されることとなりました。
医師の業務は、診察に留まらず手術、注射、診断書作成など多岐にわたります。また、医師法に基づく応召義務や医業法における「医業をなすものは医師でなければならない」という特殊性もあります。
時間外労働を軽減するための特効薬は、「医師」の数を増やすことに他なりませんが、医師を育成するには長期間が必要です。医学部6年、初期研修、後期研修を経ても、最短でも10年は必要です。
こうした状況を踏まえ、近年の診療報酬改定では、医療関係職種(診療放射線技師、臨床検査技師など)の業務範囲の見直しが行われ、医師でなくてもできる業務をタスクシフト、タスクシェアすることで、医師の時間外労働時間の上限規制を達成し、「安心・安全で質の高い医療」の実現に向けた対策が進められています。
この取り組みは、医療の質を維持しつつ、医師の負担を軽減するために欠かせないものであり、引き続き積極的な推進が求められます。
【具体的な取り組み例】
- タスクシフト・タスクシェア
- 医師でなくてもできる業務を、看護師や薬剤師などの医療関係職種に委ねることで、医師の負担を軽減
- 具体的には、問診、検査結果の分析、服薬指導などを医療関係職種が担当
- チーム医療の推進
- 医師だけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士など、多職種が連携して患者さんを診療
- 各職種の専門性を活かし、より質の高い医療を提供
- ICTの活用
- オンライン診療や遠隔医療の導入により、医師の移動時間を削減
- 電子カルテやレセプトコンピュータなどの活用により、事務作業の効率化
- 医療機関の経営改革
- 医師の働き方改革を推進するための経営体制の構築
- 人材育成や労働環境の改善
◆医師事務作業補助者の仕事
医師のアンケートによると、「文書類作成」など事務作業に負担を感じている医師が多く、その負担軽減策として2008年に誕生したのが医師事務作業補助者です。
医師事務作業補助者は、医師の事務作業を「タスクシフト」し、「専従」で担うことが役割です。具体的には、以下のような業務を行います。
- 文書作成補助: 診断書や患者のカルテなどの文書作成を補助します。
- カルテの代行入力: 患者のカルテ情報を電子フォームに入力するなどして、医師の業務負担を軽減します。
- 医療の質の向上に資する事務作業: 診療に関するデータの整理・管理、がん登録等の統計・調査、など医療の品質向上につながる業務を行います。
- 行政上の対応: 感染症サーベイランスなどの行政上の対応を行います。
- 学会や会議資料の準備: 医師が参加する学会や会議のプレゼンテーションの資料作成、参考文献の収集、会議のスケジュール管理などをサポートします。
医師事務作業補助者は、医師の負担を軽減しより効果的に診療に集中できるようサポートすることで、医療の質や効率性を向上させる重要な役割を果たしています。
◆医師事務作業補助体制加算
医師事務作業補者を基準配置すると診療報酬に加算として反映されます。
いわゆる「医師事務作業補体制加算」です。
近年の診療報酬改定(2年毎)では毎回増点され医師の負担軽減のために有効な配置であることを裏づけています。
【医師事務作業補助体制加算の導入効果】
- 医師の事務負担軽減
- 医師事務作業補助者が、カルテ作成、レセプト請求、各種書類作成などの事務作業を担うことで、医師の事務負担を軽減します。
- 医師は、本来の業務である診察や治療に集中できるようになり、医療の質向上に繋がります。
- 医療事務の効率化
- 医師事務作業補助者が事務作業を分担することで、事務の効率化が図られます。
- 待ち時間の短縮や、医療事務職員の負担軽減にも繋がります。
- 医療機関の経営改善
- 医師事務作業補助体制加算の算定により、医療機関の収入増加に繋がります。
- 医師の負担軽減による離職防止や、事務の効率化によるコスト削減にも効果があります。
医師事務作業補助体制加算は、医師の負担軽減と医療の質向上に貢献する重要な制度です。今後も、医師事務作業補助者の育成や、体制の充実など、課題解決に向けた取り組みが進められることが期待されます。
◆32時間研修
「医師事務作業補助体制加算」の施設基準では配置から6ケ月以内に32時間以上の研修を受けた者と要件化しています。
研修内容はOJTを含む以下項目を要件としています。
- 医師法、医療法、医薬品医療機器等法、健康保険法等の関連法規の概要
- 個人情報の保護に関する事項
- 当該医療機関で提供される一般的な医療内容及び各配置部門における医療内容や用語
- 診療録等の記載・管理及び代筆、代行入力
- 電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む。)
◆医師事務作業補助者と医療事務の違い
医療事務と医師事務作業補助者は、医療機関で働く事務職ですが、仕事内容や求められるスキルには違いがあります。
【医療事務】
医療機関の窓口業務を担当します。具体的には、以下のような業務を行います。
- 受付・会計
- 保険請求
- カルテ作成・管理
- 電話対応
- 患者さんへの案内
医療事務は、患者さんやご家族と直接接する機会が多いため、コミュニケーション能力や丁寧な対応が求められます。また、医療保険に関する知識や医療事務の専門知識も必要です。
【医師事務作業補助者】
医師の事務作業をサポートします。具体的には、以下のような業務を行います。
- 診断書等の文書作成補助
- カルテの代行入力
- 医療データの整理・分析
- 学会資料の準備
- 文献検索
医師事務作業補助者は、医師の指示に従って正確に作業を行うことが求められます。また、医療用語や専門用語を理解し、パソコン操作に慣れていることも必要です。