「高血圧症」
血圧とは
心臓が拍動して血液を送り出す力と、血管の抵抗によって生じる圧力です。
最高血圧と最低血圧に分けられます。
最高血圧は、心臓が拍動して血液を送り出すときにかかる圧力で、
最低血圧は、心臓が休んでいるときにかかる圧力です。
血圧は、生きている限り常に変化しています。安静にしているときよりも、運動しているときや、緊張しているとき、怒っているときなどは、血圧が高くなります。しかし、血圧が常に高い状態が続くと、心臓病や脳卒中などの病気につながる危険性があります。
高血圧症について
高血圧症とは、くり返して測っても血圧が正常より高い場合をいいます。くり返しの測定で診察室血圧で最高血圧が140mmHg以上、あるいは、最低血圧が90mmHg以上であれば、高血圧と診断されます。
高血圧症は、心臓病や脳卒中、腎臓病などの重篤な病気のリスクを高めるため、早期発 見と治療が大切です。
<高血圧症の原因>
遺伝的要因、加齢、肥満、塩分の摂り過ぎ、喫煙、運動不足、ストレスなどです。
<高血圧症の症状>
ほとんど自覚症状がありません。そのため、定期的に血圧を測定して、高血圧症の早期発見と治療が大切です。
<高血圧症の治療>
高血圧症の治療では、以下のような生活習慣の改善が勧められます。
- 減塩(1日6g未満)
- 適度な運動(週に150分以上の有酸素運動)
- 適正体重の維持(肥満の人は、BMIを25以下に)
- 禁煙
- ストレスの管理
生活習慣の改善を行っても効果が見られない場合は、降圧薬の服用を行います。
高血圧症は、適切に治療することで、心臓病や脳卒中などの重篤な病気を予防することができます。
本態性高血圧と二次性高血圧の違い
二次性高血圧症と本態性高血圧症は、高血圧症の2つの主要な分類です。二次性高血圧症は、特定の病気や状態によって引き起こされる高血圧です。本態性高血圧症は、原因が特定できない高血圧です。
二次性高血圧症の原因には、次のようなものがあります。
- 腎疾患
- 甲状腺機能亢進症
- 副腎疾患
- アジソン病
- 睡眠時無呼吸症候群
- 薬剤の副作用
本態性高血圧症の原因は、完全には解明されていませんが、遺伝や生活習慣などが関係していると考えられています。
二次性高血圧症は、原因となっている病気や状態を治療することで、高血圧を改善することができます。本態性高血圧症は、生活習慣の改善と降圧薬の服用によって、高血圧をコントロールすることができます。
高血圧症の降圧剤
高血圧症の治療に使用される薬には、次のようなものがあります。
- 利尿薬
- アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
- アンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)
- カルシウム拮抗薬
- 交感神経遮断薬
- アルドステロン受容体拮抗薬
これらの薬は、血圧を下げるために、血管を拡張したり、心臓の負担を減らしたり、体内の水分量を減らしたり、血液の流れを良くしたりする働きをします。
高血圧症の治療には、1種類の薬で十分な場合もあれば、2種類以上の薬を併用することもあります。薬の種類や量は、患者さんの血圧の値や他の病気によって異なります。
高血圧症の治療は、長い期間にわたって続ける必要があります。薬を服用している間は、定期的に血圧を測定して、血圧が適切にコントロールされていることを確認する必要があります。
主な薬剤名
降圧剤の代表的な薬剤名は、以下の通りです。
- 利尿薬:フロセミド、トルセミド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、ブメタニド
- ACE阻害薬:エナラプリル、リシノプリル、ラシジラプリル、カプトプリル、ベナゼプリル
- ARB:ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、イラベサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン
- カルシウム拮抗薬:アムロジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ベラパミル、ジルチアゼム
- 交感神経遮断薬:アセブトロール、カルベジロール、メトプロロール
- アルドステロン受容体拮抗薬:エプレレノン、スピロノラクトン
「糖尿病」
糖尿病は、インスリンというホルモンの不足や作用低下が原因で、血糖値の上昇を抑える働き(耐糖能)が低下してしまうため、高血糖が慢性的に続く病気です。
重症になると血液中の糖が尿にあふれ出ることで甘い匂いがします。
1型糖尿病と2型糖尿病があります。
1型はインスリン依存型とも呼ばれ、自己免疫疾患などが原因でインスリン分泌細胞が破壊されるもので、インスリンの自己注射が必要です。一方で2型はインスリン非依存型と呼ばれ、遺伝的要因に過食や運動不足などの生活習慣が重なって発症します。その他の特定の疾患や機序(メカニズム)によるものや妊娠糖尿病がありますが、多くは2型であり、日本ではその疑いがある人(可能性を否定できない人を含む)は成人の6人に1人、約1870万人にのぼっています。
糖尿病の恐さは、自覚症状のないままに重篤な合併症が進展することで、微小な血管の障害である網膜症・腎症・神経障害の三大合併症のほか、より大きな血管の動脈硬化が進行して心臓病や脳卒中のリスクも高まります。
(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット引用)
【糖尿病の症状】
- のどが渇く
- 頻尿
- 多飲
- 多食
- 体重減少
- 疲労感
- 視力障害
- 手足のしびれ
- 性機能障害
- 傷が治りにくい
- 発熱
- 吐き気・嘔吐
- 意識障害
【糖尿病の診断】
血液検査で血糖値とHbA1cを測定することで行われます。
- 空腹時血糖値測定: 8時間以上の断食後、血液から血糖値を測定します。空腹時の血糖値が126 mg/dL以上
- 経口ブドウ糖負荷試験: 断食後に75gのブドウ糖を摂取し、2時間後の血糖値を測定します。2時間後の血糖値が200 mg/dL以上
- 随時血糖値測定:食事前後や随時測定された血糖値のことです。血糖値が200 mg/dL以上
- HbA1c測定: 過去2〜3ヶ月間の平均血糖値を示すHbA1c値を測定します。HbA1cが6.5%以上
1から4のいずれかに当てはまる場合、「糖尿病型」と診断され、再検査で同様の結果であった場合に、糖尿病と診断されます。
また、同日に1から3のいずれかと、4が同時に確認された場合にも糖尿病と診断されます。
【糖尿病の治療】
◆食事療法
糖質の摂取量を減らし、バランスの良い食事を心がけましょう。糖質は、体内でブドウ糖に分解され、エネルギーになります。しかし、糖質の摂取量を過剰に摂取すると、血糖値が急上昇します。
糖質の摂取量を制限するには、以下のような食事を心がけましょう。
- ご飯やパンなどの主食の量を減らす。
- 野菜や果物などの食物繊維を多く含む食品を多く食べる。
- 脂質やタンパク質を適度に摂取する。
◆運動療法
運動療法では、1日30分以上程度の運動を週に3〜4回行うようにしましょう。運動は、血糖値を下げ、体重を減らす効果があります。また、運動は、心臓病や脳卒中などのリスクを減らす効果もあります。
◆薬物療法
食事療法や運動療法で血糖値がコントロールできない場合は、薬物療法が必要になる場合があります。薬物療法では、インスリンや経口血糖降下薬などの薬を服用する場合があります。
糖尿病は、完治することはできませんが、適切な治療を行うことで、血糖値をコントロールし、合併症を予防することができます。
「脂質異常症」
脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が異常な値を示す状態を指します。これにより、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な心血管疾患を引き起こすリスクが高まります。
脂質異常症には以下の3つのタイプがあります。
- 高LDLコレステロール血症:いわゆる「悪玉コレステロール」であるLDLコレステロールが高い状態。動脈にコレステロールが蓄積し、動脈硬化を促進します。
- 低HDLコレステロール血症:いわゆる「善玉コレステロール」であるHDLコレステロールが低い状態。HDLは血液中の余分なコレステロールを肝臓に運ぶ役割があり、これが低下すると心血管リスクが高まります。
- 高トリグリセリド血症:中性脂肪(トリグリセリド)が高い状態。これも動脈硬化や心血管疾患のリスクを増加させます。
脂質異常症は、遺伝的な要因のほか、不適切な食生活(高脂肪食、過剰な糖分摂取)、運動不足、肥満、喫煙、飲酒などが原因で発症することが多いです。治療には、食事や運動療法の改善、必要に応じて薬物療法が行われます。
【脂質異常症の症状】
脂質異常症自体は初期段階で目立った症状がほとんどなく、「サイレントキラー」とも呼ばれることがあります。しかし、放置しておくと動脈硬化が進行し、最終的に心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾患を引き起こすリスクが高まります。
1. 動脈硬化
- 血流の障害により心筋梗塞や脳梗塞が発症するリスクが高まります。
2. 心筋梗塞・脳梗塞
- 心筋梗塞:胸の激しい痛み、息切れ、発汗など。命に関わる緊急状態です。
- 脳梗塞:突然の言語障害、片側の手足の麻痺、めまいなど。こちらも迅速な治療が必要です。
3. 角膜輪
- 角膜の周りに白色または灰色のリング状の沈着物が現れます。これは高コレステロール血症に関連して発生することが多く、通常視力には影響を与えません。
4. 黄色腫
- 皮膚や腱の下にコレステロールが蓄積し、黄色い小さな結節が現れることがあります。特にまぶたや肘、膝、アキレス腱に多く見られます。
5. 胆石
- 胆のうに結石ができる状態で、コレステロールが固まって結石を形成します。
【脂質異常症の診断】
質異常症の診断は、主に血液検査によって行われ、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の値を測定します。診断の基準は、以下の脂質の数値が基準を超えるかどうかによって判断されます。
1. 血液検査の主な項目
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール):
- LDLコレステロールが高いと、血管にコレステロールが溜まり、動脈硬化のリスクが高まります。
- HDLコレステロール(善玉コレステロール):
- HDLコレステロールは余分なコレステロールを肝臓に運び、体外に排出する役割を担っています。これが低いと動脈硬化のリスクが増加します。
- トリグリセリド(中性脂肪):
- 中性脂肪が高いと、動脈硬化や心血管疾患のリスクが高まります。
脂質異常症の診断基準は、空腹時の採血結果を元に、診断されます。
- LDLコレステロールが140 mg/dL以:高LDLコレステロール血症
- HDLコレステロールが40 mg/dL未満:低HDLコレステロール血症
- トリグリセリドが150 mg/dL以上: 高トリグリセリド血症
【脂質異常症の治療】
脂質異常症の治療は、主に生活習慣の改善と、必要に応じて薬物療法を組み合わせて行います。治療の目的は、血液中の脂質(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)のバランスを整え、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患のリスクを低減することです。
1. 生活習慣の改善
脂質異常症の管理において、まず推奨されるのは生活習慣の改善です。具体的な改善方法には次のようなものがあります。
1.1. 食事療法
食事内容を見直すことは、脂質異常症の治療で非常に重要です。以下の点を考慮します:
- 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取制限:動物性脂肪(牛肉、豚肉の脂身、バター、クリーム)や加工食品(マーガリン、スナック菓子など)に含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は、LDLコレステロールを増加させます。
- コレステロールの摂取制限:卵黄や内臓肉(レバー)に多く含まれるコレステロールを制限します。
- 不飽和脂肪酸の積極的摂取:魚油(EPA、DHA)や植物油(オリーブオイル、アボカド、ナッツ類)には、不飽和脂肪酸が豊富で、LDLコレステロールを下げ、HDLコレステロールを増加させます。
- 食物繊維の摂取:野菜、果物、全粒穀物、豆類に含まれる食物繊維は、腸内でコレステロールの吸収を抑える効果があります。
- 適度な飲酒:アルコールの摂取は制限するべきですが、適量であれば、HDLコレステロールを増加させる効果があることも知られています。ただし、過剰摂取は逆効果です。
1.2. 運動療法
定期的な運動は、脂質異常症の管理に効果的です。
- 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、持続的な運動がLDLコレステロールや中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増加させる効果があります。1回30分程度、週に3~5回の頻度が推奨されます。
- 筋力トレーニング:筋肉量を増加させることで基礎代謝を向上させ、脂肪を燃焼しやすい体質にします。
1.3. 体重管理
肥満は脂質異常症のリスクを高めるため、体重管理が重要です。適正体重を維持することが、血中脂質の改善に大きく寄与します。
1.4. 禁煙
喫煙はHDLコレステロールを低下させ、動脈硬化を促進します。禁煙することで、心血管リスクが低下し、脂質代謝が改善されます。
2. 薬物療法
生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合や、リスクが高い場合には、薬物療法が併用されます。以下の薬がよく使われます。
【コレステロール値を下げる薬剤】
■スタチン系製剤(HMG-CoA還元酵素阻害剤)
肝臓でのコレステロール合成を抑制し、血液中のコレステロールを減少させます。動脈硬化の予防に効果があり、脂質異常症の治療に広く用いられます。
<代表的な薬剤>
- メバロチン
- リポバス
- リバロ
- リピトール
- クレストール
- ローコール
■陰イオン交換樹脂(レジン)製剤
コレステロールの体外排泄を促進し、血中コレステロールを低下させます。
<代表的な薬剤>
- クエストラン
- コレバイン
■小腸コレステロールトランスポーター阻害剤
小腸でのコレステロール吸収を阻害し、血中コレステロールを低下させます。スタチン系製剤との併用が効果的です。
<代表的な薬剤>
- ゼチーア
【コレステロールと中性脂肪値を下げる薬剤】
■ニコチン酸誘導体製剤: LDLコレステロールの低下とHDLコレステロールの増加を促進します。
<代表的な薬剤>
- ユベラN
- コレキサミン
- ペリシット
【中性脂肪値を下げる薬剤】
■フィブラート系製剤: 中性脂肪の合成を抑制し、LDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを増加させます。
<代表的な薬剤>
- ビノグラック
- ベザトールSR
- リポクリン
- トライコア
■EPA製剤: 脂質合成の抑制と血液の固まりにくさを改善します。
<代表的な薬剤>
- エパデール
- ロトリガ
❖「高脂血症」から「脂質異常症」への名称変更
総コレステロール、LDL-C、中性脂肪のいずれかが基準値を超えている場合や、HDL-Cが基準値を下回っている場合、従来は「高脂血症」と呼び、治療の対象としてきました。しかし、HDL-C値が低い場合も「高脂血症」と呼ぶのは適切でないとの考えから、日本動脈硬化学会は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年)」の改定に伴い、病名を「脂質異常症」に変更しました。
この変更により、より正確な診断と治療方針が立てられるようになりました。